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数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

【和也side】


「どこ行く?」

「えっ?和也、決めてるんじゃないの?」

思い出作りと意気込んだものの、出かけ慣れない俺たちは玄関を出たところで立ち止まる。

「決めてない。智は行きたい場所とかある?」

「んー、ない」

即答する智に一気に脱力感が襲う。


早くも行き詰まる俺たち。


「あっ、でも……美味いもん食いたい」

普段、自分の意見を言わない智が目を輝かせて俺に訴えた。

「美味いもんって……どうせ、俺の作ったのは美味しくないですよ」

「いやっ、違うって!和也の料理、めちゃくちゃ美味しいよ」

「ぷっ…冗談だって」

必死な智に思わず吹き出してしまう。

「もう、勘弁してよ」

項垂れる智にまた笑いが込み上げる。


こんなに笑ったのはいつぶりだろう……


「ゴメンゴメン。お詫びに美味い洋食屋に連れてくから」

「マジ?やったー!」

ガッツポーズを見せる智。


こんなに喜ぶ智を見たのはいつぶりだろう……


「さっ、行くよ」

俺たちはようやく歩き始めた。


前みたいに他愛のない話をした。

あの時は、話すたびに互いの新たな一面を知ることが出来たのにいつの間にかそれが無くなった。


でも今日、久しぶりに更新された。


洋食屋についてメニューを開くと、俺も智も悩むことなく注文を決めた。


智の好物はカキフライだって事。

俺の好物がハンバーグだって事。


ボリュームがあったけど、俺たちはペロリと平らげた。


楽しさが食欲を倍増させたのかな?


お腹いっぱいになった俺たちは、近くのショッピングモールへ向かった。



「服でも見る?」

「んー、俺はいいかな?」

服に興味のない俺たちはただ歩いているだけだった。

「あっ!」

ある場所を見つけた俺は、思わず声を出してしまった。

「どうした?」

俺を見た後、目線を俺と同じ場所に向けた。

「行く?」

「いいの?」

ちゃんと俺の情報を覚えてくれていた。


俺の大好きなゲーセンへと向かった。


そしてまた智の新たな一面を知った。


智はむちゃくちゃゲームが弱かった。

けどUFOキャッチャだけは、抜群に上手かった。

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