テキストサイズ

数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

【雅紀side】


「ぅ……ん」

ゆっくりと瞼を開けると、一番に飛び込んでくる愛しい人の寝顔。

今までに経験した色々なことを感じさせない、あどけないけど綺麗な顔。

「ふふっ…可愛い」

髪を撫でると、ピョンと寝癖が跳ね返ってくる。



こんな顔を見れるようになったのは、つい最近。



『甘える』『甘えられる』
『守る』『守られる』
『支える』『支えられる』

する立場があって、してもらう立場がある。



俺はずっと後者だった。



【人】という字は、人と人が支え合って……という言葉がある。


それって本当だろうか?


どう考えたって、支え合っている漢字には見えなかった。


人という字を俺たちに当てはめると、1画目は俺、2画目は潤。


俺はずっと潤に寄りかかって生きてきた。



でも、今は考え方が変わった。



1画目が必ずしも同じ人じゃない。


そう思えるようになったのは、潤を抱いた日からだった。


あの日は俺にとって必要な日だった。

それは潤にとっても同じ。


初めて『愛される』立場から『愛する』立場に立った。


俺の与える快感に溺れていく潤が愛おしくなった。


本当の潤が見れた。

そしてある感情が芽生えた。



潤を『守りたい』って。



きっと俺よりもたくさん傷ついている。


心も……身体も。


そこまでして潤が与えれくれたものがあったから、俺は強くなれた、生きてこられた。



だから、今度は俺が与える番。



1画目は俺、2画目は潤になる。



俺が潤を支えるんだ。



「ぅん……」

ゆっくりと瞼が開くと、綺麗な瞳が俺を捉える。

「おはよ、潤」

「おは…よ」

恥ずかしいのか、俺の首に顔を埋めて隠す。


甘ったるい目覚め。


こんな朝は今まで無かった。

いつもはこんな幸せも、時間が経つと消えてしまう。



『仕事』が俺たちの幸せを奪う。

けど、今日は休み。


1日、久しぶりに恋人として過ごせる。


そして明日には全てが終わる。



やっと、あの場所に行ける。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ