数珠つなぎ
第7章 俺も愛されたい
久しぶりに日中の街並みを歩き、コーヒーを買って店に戻るとドアの前に座り込む人影が見えた。
「……誰だ」
膝に埋めていた顔を上げ、俺を確認するとスッと立ち上がった。
「社長、お久しぶりです」
「風…磨?」
「はい」
人懐っこい笑顔を俺に向ける。
その笑顔でコロリと落ち、抱くと醸し出される色気に客は魅了されていた。
「雰囲気、変わったな」
「就職活動中なので……でも、気が付いてくれて嬉しいです」
シルバーアッシュだった髪の色は、落ち着いた色になっていた。
誰かの髪型と色に……似てる?
「今日はどうした?」
「忘れ物があって……」
「そうか、待たせて悪かったな」
唯一持っているカギで、店のドアを開けた。
就職活動中と聞いて焦った。
この仕事は『金』になる。
客に身体を捧げるという辛い仕事だが、人によっては身体を捧げるだけ大金が手に入るという考えを持つ者もいる。
借金を返済し、店を去っても結局この世界から抜け出せなかった者もいる。
後者には誰もなって欲しくはない。
「今日はお店、休みなんですか?」
「あぁ」
「みんな……辞めさせたんですか」
風磨の声が後ろから聞こえて振り返る。
一緒に歩いていた風磨はいつの間にか立ち止まっていた。
「返済が終わっただけだ。お前だってそうだろ?」
風磨も智と同じように、親の借金を返す為にここで働いた。
親はまだ利口な方で、借金は一度きり。
強制捜査の情報が入っていた頃には元以上は稼いでくれていた。
他のヤツらも同じ。
少しだか退職金も払えた。
ここに留まる理由なんてない。
「でも俺は……」
「悪い、仕事が残っているんだ。忘れ物を取ったらすぐ帰れ」
未練なんて口にしたって仕方がない。
なぜか風磨は借金を完済したのに店を辞めたがらなかった。
『金』の為という理由ではないらしいが、それ以外に辞めたくない理由なんてあるのか?
「残っている人はいるんですか?」
「智と和也と潤と受付の雅紀だけだ」
「そうですか」
聞いた事のない風磨の冷たい返事が、ドアが閉まる前に耳に届いた。
「……誰だ」
膝に埋めていた顔を上げ、俺を確認するとスッと立ち上がった。
「社長、お久しぶりです」
「風…磨?」
「はい」
人懐っこい笑顔を俺に向ける。
その笑顔でコロリと落ち、抱くと醸し出される色気に客は魅了されていた。
「雰囲気、変わったな」
「就職活動中なので……でも、気が付いてくれて嬉しいです」
シルバーアッシュだった髪の色は、落ち着いた色になっていた。
誰かの髪型と色に……似てる?
「今日はどうした?」
「忘れ物があって……」
「そうか、待たせて悪かったな」
唯一持っているカギで、店のドアを開けた。
就職活動中と聞いて焦った。
この仕事は『金』になる。
客に身体を捧げるという辛い仕事だが、人によっては身体を捧げるだけ大金が手に入るという考えを持つ者もいる。
借金を返済し、店を去っても結局この世界から抜け出せなかった者もいる。
後者には誰もなって欲しくはない。
「今日はお店、休みなんですか?」
「あぁ」
「みんな……辞めさせたんですか」
風磨の声が後ろから聞こえて振り返る。
一緒に歩いていた風磨はいつの間にか立ち止まっていた。
「返済が終わっただけだ。お前だってそうだろ?」
風磨も智と同じように、親の借金を返す為にここで働いた。
親はまだ利口な方で、借金は一度きり。
強制捜査の情報が入っていた頃には元以上は稼いでくれていた。
他のヤツらも同じ。
少しだか退職金も払えた。
ここに留まる理由なんてない。
「でも俺は……」
「悪い、仕事が残っているんだ。忘れ物を取ったらすぐ帰れ」
未練なんて口にしたって仕方がない。
なぜか風磨は借金を完済したのに店を辞めたがらなかった。
『金』の為という理由ではないらしいが、それ以外に辞めたくない理由なんてあるのか?
「残っている人はいるんですか?」
「智と和也と潤と受付の雅紀だけだ」
「そうですか」
聞いた事のない風磨の冷たい返事が、ドアが閉まる前に耳に届いた。