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数珠つなぎ

第7章 俺も愛されたい

「わかり……ました」

自分の言葉を飲み込むように返事をした。

「じゃぁ、気をつけて帰れよ」

風磨に歩み寄り、肩をポンと叩いた。


俺って、こんなに優しかったか?

もしかしたらアイツらに絆されたのかもしれないな。


「社長……最後に…お願いしてもいいですか?」

振り返ると、真っ直ぐに俺を見つめる風磨。


その姿はいつかの自分と同じ。


「抱き…しめて?」


その言葉もいつかの自分と同じ。


「わかった」


あの人と同じ様に返事をした。



俺はそれで前に進むことができた。

その進む方向が正しかったとは言えない。



でも俺は今ここにいて……今を生きている。



まだ風磨の傷は浅い。


風磨も俺の事なんて忘れて……

ここでの出来事なんて忘れて……



前に向かって全うな道を進んでほしい。




俺は風磨がいる場所に歩を進め、優しく抱きしめた。

すると風磨は首に顔を埋めて、スーッと息を吸い込んだ。


「誰にも……あなたを渡さない」


吹き出す息と一緒に聞こえた声は低く、俺のいつかの言葉とは違った。

「ねぇ……潤さんじゃなかったら、智さん?それとも、和也さんですか?」

「はっ?風磨、なに言ってるんだ?」

離れようとした瞬間、腰に回った腕にがっちりホールドされて動けない。

「もしかして……雅紀さん?」

「何か勘違いしてないか?俺はアイツらとは……」

「誰かのモノのになるくらいなら……」

背中に回していた腕が緩んだので離れようよとした。

でも背中の衝撃で一瞬にして押し戻された。



「死んでください」

言葉と同時に届いた吐息はやけに冷たい。


「う…っ、あっ…」

勝手に出したことのない呻き声が漏れ、背中に流れる熱い液体を感じ、そして力なく膝から崩れ落ちた。


その姿を見ていた風磨の顔が歪んでいく。


「嫌…っ、そんな顔しないで!俺を恨んでくださいよ!憎んでよ!あなたにとって俺は……何の1番にもなれないの?」


恨んでなんかいない。

憎めるはずない。



これは俺が今までしてきた事への罰なんだ。



「す…まん」

その鉄槌を俺は風磨に下させてしまった。

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