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同居人は教えたがりな奉仕者

第2章 帽子と映画

とぼとぼと席に向かい、ふて腐れて席に座る。

そんな俺を見て、拓海はくくっと笑っている。

「何?」

「いや…やっぱり女の子と来るのとは違うな~って」

「そりゃそうだろ」

こいつ、何言ってるんだ!?

眉をひそめると、通路を歩いてる女の子の声が聞こえてきた。

「あの人、めっちゃかっこいい~」

「え?あ、ペアシートの?」

「うん。あーあ、やっぱ彼女連れかぁ」

「あんな席に座ってんだからそうでしょ」

「だよね~」

きゃあきゃあ言いながら通りすぎていく声を、ゾッとしながら聞いて…

なるべく目立たないように、顔を伏せて…帽子を目深に被る。

「やっぱ役に立ったな」

「は?」

「帽子。必要だろ?」

拓海が帽子のつばを指で弾き、俺は慌てて押さえた。

「こんな席だからさ、彼女と勘違いされると困る子は誘えなくて」

拓海は愉しそうに笑いながら話している。

その声を聞きながら…帽子を押さえる手に力がこもる。


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