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同居人は教えたがりな奉仕者

第2章 帽子と映画

すると…

拓海に腕を引っぱられて

「ガン見すんな」

近付いた分、近い距離…耳元で囁かれて。

こんな場所だから小声なのは仕方ない。

それは分かるけど!!

耳に拓海の吐息がかかって…ぞくん、と身震いしてしまう。

「へ?」

「わ…分かったから離せ!」

拓海を押しやって、座席の隅に体を寄せた。

くっそぉ…!

こんなもん、条件反射でしかない。

ただこそばゆかっただけ。

耳元で話すんじゃねぇ!!

耳をごしごしと手でこすって感覚を消していると、拓海の笑いをこらえる声が聞こえた。

「あ?」

「耳、ちぎれそう」

そんな簡単に千切れるかよ!!

ふて腐れて、腕組みしたままスクリーンに目を戻した。

せっかく面白かったのにな。

頭の中は、どのタイミングで席をたつか…それだけ。

大団円なラストシーンの後、街の全景を捉えながらのエンドロールが流れて…

おしっ。もういいだろ。

立ち上がりかけた時、突然。

拓海の腕が俺の肩に回った。


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