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ブルームーン・シンドローム

第1章 ブルームーン・シンドローム


「畜生……っ」


 絞り出すようにそれだけを吐き捨てる。それが最後だった。

 そのまま蒼の体に顔を埋める。

 何かが酷く高ぶっていた。悔しいのか、憎らしいのか、悲しいのか……愛しいのかわからない。

 衝動のままに抱いた体は酷く甘美だ。

 暁人は目を閉じた。せり上がる背徳感から逃げたくて、どうしようもない。

 ……蒼い月のせいだ。

 言い訳を探すように、心の内で呟く。

 美しすぎる蒼い月が、心を惑わしかき乱していく。

 同性の男を抱くという、普段ならば及びもつかない境地に自分を導く。


 ――違いますよ。


 ふとそんな声が、暁人の耳に聞こえた気がした。

 ぞっとして、蒼を見下ろす。

 嬌声と共に喘ぐ肩。それでも彼は不敵な笑みを口元に浮かべ、暁人を見上げている。

 ほんの一瞬垣間見えた翳りはなりを潜ませ、小悪魔じみた表情(かお)をして、不思議な色の青い瞳は囁いていた。

 悪いのは月ではないと。自分の意志でここにいるのだと。

 ――僕たちは共犯である、と。
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