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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第8章 奪われて…

ぐったりと、力が入らない。



あたしの上で果てている志桜さんは、熱い息を吐きながらあたしの名前を何度も口にする。



「優依…優依…愛してる」



ドクン…



「志桜さ…」



「優依」



彼は少し顔を上げて、微笑みながらあたしの頭や頬を撫でた。



「愛してる。君を、愛してる」



あたしはなぜか涙が溢れた。



どうして泣いているのか、自分でもわからない。



ただ、あの頃に約束を口にした人が、今目の前にいるのだということははっきりとした。



忘れてしまっていたのは幼すぎたせいと、その後に両親と死に別れた衝撃があまりにも大きすぎたから。



「志桜さん…あたし、ちゃんと約束、果たせたよね?」



「…優依」



あたしは手を伸ばして、切なそうな表情をする彼の頬を撫でた。



「ごめん、なさい…あたし…」



涙が次から次へと止まらない。



「あなたのお嫁さんになるって、言ったのに…」



志桜さんは両手であたしの顔を包み込んで、額や頬にキスをする。



「優依…好きだ。愛してる。ずっと、君だけを愛してる」



あたし、は…?



あの頃、どんな思いであんなことを言ったの?



好きの意味を、知らなかったんじゃないの?








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