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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第12章 不安になる

「ご、ごめん…」



あたしは急いで洗面台から離れる。



すると、悠樹くんはあたしをじろりと睨んでから鏡を見た。



「昨日まで落ち込んでたくせに今朝になって急に機嫌がよくなってんの。なんで?」



「え!?」



そんなの、言えるわけないよ…



「ふん、まあいいや。週末さ、兄貴の婚約者が来るんだって。俺らも同席しろって親父が言ってる。めんどくせぇなあ」



ドクン…



「婚約者…?」



悠樹くんは顔を洗って歯を磨きはじめる。



「お前、知らなかったっけ?兄貴、婚約者がいるんだよ。親父が勝手に決めてんだけど」



そういえば、前におじさまがそんなことを言っていた気がする。



「そう、なんだ…」



声が、震えた。



手も、震える。



「兄貴は嫌がってるけど、もう決まってるし親父には逆らえないだろ。とりあえず、俺らは黙ってメシでも食ってりゃいいよ」



悠樹くんは軽くそんなことを言った。



だけど、あたしはひどく動揺している。



ドクンドクンドクン…



心臓がうるさい。



「お前、何やってんの?早く朝飯食おーぜ」



「う、うん…」



悠樹くんはそう言って洗面所を出ていってしまった。



婚約者…



志桜さんに婚約者…



志桜さん、結婚するの?








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