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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第12章 不安になる

「どうしたの?具合でも悪い?」



志桜さんにそう訊かれても、あたしは何も言わなかった。



言いたいことはたくさんあったけど、



何よりもあたしは…



「志桜さん、少し、ワガママを言ってもいい?」



あたしがそう言うと、彼はにっこりと笑った。



「いいよ。どうしたの?」



「えっと…」



卑怯かな、と思ったけど…



「…キス、してほしい」



「優依?」



志桜さんが少し驚いた顔をしている。



やっぱり唐突だったかな。



ちゃんと理由を言わなきゃダメかな。



だけど、彼は小さく笑って部屋のドアを閉めた。



「いいよ」



志桜さんはあたしの肩に手を置いて、ゆっくりと顔を近づけてきた。



唇に触れたとき。




あたしの中の嫌な気持ちがどんどん浄化されていくみたいだった。



ちゅっ…ちゅっ…



軽いキスを繰り返す。



だけど、足りないの。



もっと、したい。



あの忌まわしいキスを忘れたい。



くちゅ…



あたしは両手で彼の頬をつかんで、深いキスをした。



舌を入れて、舐めて、絡ませて。



「ん…ぁあ、は…」



いっぱい、感じたい。



婚約者…



キスの途中で思い出してしまって、あたしはとっさに彼から離れた。






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