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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第12章 不安になる

何て答えるの?



志桜さん…



あたしは緊張のあまり動けない。



聞きたいような、聞きたくないような、変な気持ち。



だけど志桜さんはなかなか答えない。



美鶴さんがしびれを切らして訊ねる。



「いるんだ、好きな人」



「いるよ。10年以上想い続けてる人が」



ドクン…



そ、れ…あたし?



「誰?」



美鶴さんの冷ややかな言葉。



「君の知らない人だ」



「嫌よ!あたしだって大神くんのこと高校の頃から好きだったのよ」



「あのとき君には別に婚約者がいたよね?」



「そうよ。親の決めた好きでもない相手だったわ。だけど彼の家が破産したから婚約破棄になったの。あたしはやっと好きな人に好きだって言えるようになったのに…」



なんだか話が大きくなってる。



お金持ちは大変なんだなって思う。



好きでもない人と婚約なんて、あたしだって嫌だ。



「ごめん。その気持ちには答えられない」



「その人と結婚するの?」



ドクン…



美鶴さんて、あたしが聞きたいことを全部聞いてくれる。



志桜さんの答えが気になる。



ドキドキしながら耳を傾ける。



だけど…



「しないよ。僕は誰とも結婚はしない」



ズキ…



やっぱり、あたしのときと同じ答え。



志桜さんの言葉が冷たくて、重々しくて、胸が痛くなった。






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