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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第12章 不安になる

そう、だよね…



あたし、何を期待したんだろ。



そもそも付き合ってもいないのに。



バカみたい。



あたしはそっと部屋から離れて洗面所へと駆け込んだ。



鏡の前で自分の顔を見つめる。



「ひどい顔」



安堵と落胆の不思議な感情が胸の中で渦巻いてる。



じっと鏡を見ていたら、涙がこぼれた。



「あ、たし…」



やだ…



今頃、気がつくなんて…



「す、き…」



志桜さん、あたし…



「すき。すき。すき…」



涙がぼろぼろとこぼれて止まらない。



「あ、いしてる…あいしてるの」



他の人のところにいかないで。



あたしのそばにいて。



「どこにもいかないで」



死なないで。



あたしを置いていかないで。



「う…うぅ…ぐすっ…」



いつの間にこんな…



あたし…



志桜さんのことでいっぱいになってる。



離れたくないよ。



ずっと一緒にいたいよ。



「…志桜さん、志桜さん」



ガタッと扉が開く音がして、洗面所に誰かが入ってきた。



驚いて振り返ると、そこには本人がいた。



「どうしたの?優依」



「あ…志桜さ…」



「なぜ泣いてるの?」



彼は真顔でゆっくりとあたしに近づいてきた。



あたしは急いで涙を拭う。



「何でもないです」



「うそ」



志桜さんはあたしの頬に手で触れる。



「もしかして、さっきの話を聞いてた?」



ドクン…








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