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甘い鎖~縛られて溶かされる~

第5章 怖いのに…

それっきり、あたしたちは黙ってしまった。



せっかく仲良くなれそうだったのに、あたし余計なこと言っちゃったな…



気まずい空気の中、志桜さんが戻ってきた。



「何?この通夜みたいな空気は」



「えと…なんでも、ないです」



「喧嘩でもした?」



彼は笑いながら椅子に座る。



「俺、帰る」



「え?じゃあ、あたしも」



帰ろうとする悠樹くんの後を追いかける。



すると志桜さんが呆れ声を出した。



「君たち、どうやって帰るの?」



悠樹くんは志桜さんを睨みつける。



「帰りの電車代くらいあるし」



あ、あたし…も。



お金を確認しようとバッグを覗いてみたら、財布を忘れていることに気づいた。



悠樹くんはさっさとひとりで行ってしまう。



「あ…」



あたしは志桜さんとふたりで残されてしまった。



余計なこと、言わなければよかった…



「優依、僕たちも帰ろうか」



志桜さんがにっこり笑った。



「…はい」



ドキドキドキ…



緊張し始めるあたしの手を志桜さんが握る。



ビクッ…



「あ、あの…ひとりで、歩けますから」



そう言って離そうとするあたしの手を、志桜さんがぎゅっと握った。



「逃げちゃ駄目だよ」



ドクン…





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