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　ヒカルはそのままメイドたちに、ザッハ伯爵の屋敷へと連れて行かれることになった。レイナとリュージンの姿も探したが、観客がお祭り騒ぎでごったがえしていたので見つけることができなかった。

(クロード……レイナ……ごめんね……)

　ザッハ伯爵の屋敷は闘技場から少し離れた場所にあった。それでもまだ大歓声は微かに聞こえてくる。

　屋敷の中に入ると、ハイネックのドレスを着た女性がヒカルを見るなり近づいてきた。

「あなたが今日から働く新人のメイドですね。私は使用人全体を統括する家政婦のオルバです」

「あ、あの……ヒカルです。よろしくお願いします……」

　ヒカルはオルバの威厳ある雰囲気に圧倒され、おずおずと答える。

「声が小さい。もっとはっきりと話しなさい！」
「は、はいっ……」

　早速厳しく叱られると、周りにいたメイドたちがクスクスと笑った。
　すごく嫌な雰囲気が流れて、ヒカルはこの世界に来る前のことを思い出す。

　みんな自分を見て笑っている、誰も助けてくれない──そして私はまたひとりぼっちだ。

　やっとあの嫌な世界から逃れてきたのに、また同じ事を繰り返すのか、また苦しい思いをしなければいけないのか──。