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ぼっち─選択はあなたに─

第20章 伯爵の屋敷

「ちょっと、なんで逃げるのよ! 誰かっ……誰かあの子を捕まえて!!」

 エマの叫び声が廊下に響き渡る。
 何事かと振り返るメイドたちの合間を縫って、ヒカルは走り抜ける。

(嫌だっ……ここにいたくないっ! 助けてっ……助けて、クロード……!)

 しかしあと少しで玄関というところで、ヒカルは何かにつまずいて盛大に転んでしまった。

「……痛っ!」
「汚ない格好で出歩くなと言ったはずですよ」
「!」

 そこに立っていたのはオルバだった。さっきよりも恐い顔をしてヒカルを見下ろしている。

「全く、あなたは自分の立場をわかってないようですね」
「……っ……」
「あなたはザッハ伯爵様との賭けに負けたのでしょう? あなたが逃げれば、クロードもどうなるかわかりませんよ」
「!!」
「自分が無力だということを思い知りなさい」

(そんなっ……クロード……!)

 ヒカルは怒りと悔しさで両手を震わせた。
 恐らくオルバが言ってることは脅しではないだろう。自分が逃げたら、確実にクロードに危害を加えるつもりだ。ということはクロードは監視されている?

「あっ、オルバ様が捕まえてくださったんですね! 良かったぁ~」

 そこへメイド服を着たエマが歩いてきた。

「エマ……あなた、この子に何を話したの?」
「え?」


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