テキストサイズ

ぼっち─選択はあなたに─

第22章 闘技場

「あなたはっ……」

 ユズリノはその姿を見て思い出す。
 バンダナを頭に巻いたリュージンは呪いの歌を止めてくれた者だ。それでは今目の前で薔薇のツルに締め付けられているのは……。

「お久しぶりですね、ガトー先生」
「お前はっ……リュージン!?」

 ユズリノとメキユは二人を交互に見た。

「やはりあなたでしたか、楽団長ガトー・ガノフ。半年前、モンブラン城で行方不明になったと思ったら、こんな所にいたとは……楽団の皆さんはどこにいるんです?」
「……っ……」
「そして父上と母上……城の者たちも……。石化の呪いは全てあなたとザッハの仕業ですか?」

 リュージンはフードを被る男、ガトーを険しい瞳で睨み付ける。

「フッ……まさかお前が私たちのことを調べていたとはな……。やはりあの時、殺しておくべきだった」

 リュージンの瞳の奥が光る。
 腰にある短剣を引き抜くと、ガトーに向けて投げつけた。

「!」

 ガトーの耳スレスレに短剣が掠め、ガトーの顔が露になる。

「《禁断の旋律》を彼女に教えたのもあなたですよね。音楽を呪いに利用するなんて……一番あなたが嫌っていたことなのに」

 更にリュージンは二本目の短剣を取り出すと、今度はガトーの喉元に狙いを定めた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ