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ぼっち─選択はあなたに─

第22章 闘技場

 しかしガトーは喉を鳴らして笑う。

「リュージン……ラザニーア王国の第2王子よ。恨むなら、モンブラン城を独り占めしようとした父親を恨むんだな」

 そう言い放つとガトーは黒いもやに包まれて、その場から姿を消した。
 ガトーがいた場所には薔薇のツルだけが残されていた。

「逃げたか……」

 リュージンは短剣を鞘に納めると、ユズリノとメキユに振り返った。

「なんで逃がすべか!」
「ちょっと、どうするのよ、これ!」

 ユズリノとメキユが同時に叫ぶ。
 二人の下半身は未だ石化したままだった。

「ああ……そうだったね。たぶんその呪いは神の石の力がないと解けないだろうから、クロードとヒカルが戻ってくるまで、このリュートの音色を聴かせてあげるよ」

 そう言うとリュージンは二人のそばに座ると、弦楽器のリュートを手に持った。

「待って。あなた、あの男のことガトー先生って呼んでたけど、知り合いなの? 彼は何者? それにラザニーア王国の第2王子って……」

 困惑するユズリノにリュージンは微笑する。

「そういえばまだ自己紹介してなかったね。オレはラザニーア国王の次男、リュージン。あの男はオレが幼少の頃、城で楽器の演奏を教えてくれた、楽団長のガトー・ガノフだ」

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