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ぼっち─選択はあなたに─

第30章 ヒカルの選択

「お父さん、お姉ちゃん…………お母さん、いってきます」

 私は写真立てに向かって、家族のみんなに声をかけた。

 写真の中の私とヒカリお姉ちゃんは、3歳の姿で止まっている。お父さんが私を抱っこして、お母さんがお姉ちゃんを抱っこしていた。

 この写真は、お父さんが研究所のデスクの引き出しの中に保存していたらしく、久遠さんが大切に保管してくれていた。

「あっ、もうこんな時間……行かなきゃ!」

 私は鞄を持って、慌てて家を出た。
 舗装されていない道を踏んで、何処までも続く青い空と、緑の草原の中を歩いた。

 私は今、アイルランドにいる。

『さあ、ヒカル。君はどう生きる──?』

 あの時、私が出した答えは「現実世界を生きる」だった。
 一度は自ら捨ててしまった命だけど、やっぱり私はヒカルとして現実世界で生きたかった。私がこの世に生まれてきた意味を知りたかった。

 その返事を聞いた久遠さんは、どこかホッとした表情を浮かべていた。

『大丈夫、君はひとりじゃない。そしていつか、運命の出会いがあるだろう』

 久遠さんはそう言うと、私に一枚の写真をくれた。
 それは青い空と緑の草原と、その先にある崖の上に立つお城の写真だった。
 その風景はまるで、ソルト町から見えるモンブラン城の景色とそっくりだった。


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