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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第1章 出会い

「いつきくんてさ、先月、うちの隣に引っ越してきた家の子でしょ?」
「え?」
「ほら、あの家でしょ?違った?」

鈴は、その公園から見える僕の家を指さして聞いた。

「あ、うん。合ってる」
「お隣さんの顔ぐらい覚えといて欲しいなぁ、なぁんて。私、今あんまり学校に通ってないしね。分からなくてもしょうがないか。てか、君も学校通ってないよね?」
「あ、僕はまだ…」
「あ、もしかして年長さんなの?どこの幼稚園?」
「あー、えーと……」

鈴は、『いじめられっ子』とは思えないほどよく笑い、楽しそうにいろんな話をしてくれた。
学校には週に1回ぐらいしか行ってないこと、家と塾で受験勉強をしていること、中学受験をしてみんなと違う中学に行くつもりなこと。新しい学校に行ったら、バレー部かテニス部にはいりたいこと。

「話、聞いてくれてありがと」
「えっ、えっ?」

 ただボーっと聞いていただけなのに、突然お礼を言われて戸惑っていると、何故か笑われた。

「ふふ、いつきくんてさ、ちょっと面白いね。それに、なんだか可愛い!」

 空を見上げる横顔はとても綺麗で、笑うと可愛いらしくなって、そんな人にまさか自分が「可愛い」と言われるとは思ってなくて、それにどう返したらいいのか分からなくて困っていると、更に笑われた。

「あはは。やっぱり面白い!それに、可愛い!」
「……。」
「いつきくん、気に入った!だから特別に、今日から私の弟ってことにしてあげる」
「えぇっ…」

それが、僕たちの始まりだった。

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