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お酒とオールバックに溺れる夜

第22章 第22酒 -戦友③の味-

「未亜...

俺...

俺って
どんな人間だっけ?」

生気のない顔で
純さんは

私を抱き締めた。

「何言ってるの!

純さんは、純さんでしょ?

口が悪くて
横柄で
俺様で
自分勝手で

でも
家族思いで
優しくて
温かくて
思いやりのある人だよ!」

切なさで
胸が張り裂けそうだった。

久しぶりの再開と
純さんの腕の力強さに

決別した恋心が
戻ってくるようで

心が折れそうだ。



「未亜...

俺さ

いつまで
嘘の俺でいなきゃ
いけないんだろうな...」

純さんは
泣いていた。

中学の頃から
弟になりきって
生きてきた純さん。

母親への愛情を
求めて
得られなかった
絶望感。

そんな過去を
乗り越えて

今は、薫さんと
幸せに暮らしてたんじゃないの?

どうして
こんなに
傷付いているの?

「未亜...

お前がいないと

苦しいんだよ...」

「純さ...ん......」

抱きしめ返したい衝動と
戦っていると

「純、何してるの?」


無表情で
こちらを見つめる
薫さんが立っていた。

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