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お酒とオールバックに溺れる夜

第6章 第6酒 -嫉妬の味-

シーンと
静まり返る店内。

数秒間の
静寂を破ったのは
純さんだった。

「彩菜、帰れ...

二度とこの店に来るな」

純さんの低く
重たい声が響いた。

反抗を許さない
冷たい視線は、

一部始終を見ていた
周りの人々を凍りつかせた。

彩菜さんは
目に涙を浮かべながら、
何も言わずに店を出ていった。

私には、
彩菜さんの気持ちが分かっていた...

私と同じ瞳で
純さんを見つめていたから。

でも、私なんて
嫉妬されるほどの
相手なんかじゃない。

ライバルと
言われるにはほど遠い、

ただ私が
一方的に好きなだけ。

この気持ちだけは、
誰に何を言われようが、
何をされようが譲れない。

複雑な感情で、
彩菜さんの後ろ姿を見送ったのだった。

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