新・Beast〜獣たちに好かれた僕〜
第1章 出会い
それからしばらくして、僕の家におじいちゃんが訪ねてきた。
祖父「これからどうするつもりだ?」
聖輝「…高校には行けないので…働こうと思っています…」
祖父「アテはあるのか?」
聖輝「いえ…」
どこも中卒なんて雇ってくれない…そんな事分かっている。
でも、今僕に残された選択肢はそれしかなかった。
祖父「…聖輝くん、きみは勉強が好きか?」
聖輝「…はい、好きです…」
祖父「そうか…」
聖輝「…いろんな事を知る事が楽しいんです…」
祖父「楽しい?」
聖輝「はい、本から…メディアから…ネットから…そして人から…僕の知らない事を教えてくれるのがすごい嬉しくて…」
聖輝「だからもっと勉強したくなるんです…」
祖父「ふっ…龍一そっくりだな…」
聖輝「お父さんもそんな人だったんですか?」
祖父「あぁ…あいつは常に勉強してたな…」
祖父「何が楽しくて勉強していたのか私にはさっぱりだったが…」
祖父「さっき聖輝くんが話してくれたように…きっと龍一の中にも勉強する意味があったんだろうな…」
聖輝「そうですね…」
祖父「…聖輝くん、きみさえよければ東京に来ないか?」
聖輝「えっ?」
祖父「きみは今、孤児になって何から何まで全て1人で担わないといけない。」
祖父「誰の助けも借りずにたった1人で生きていくのも大変だろう。」
祖父「でも、東京に来れば私はもちろん、鷹人も力になってくれる。」
祖父「悪い話ではないと思うが…どうだ?」
聖輝「……。」
確かに、何も残されていない僕にとってはすごく有難い話だ…
でも……
生まれ育った町…お父さんとお母さんとの思い出が詰まった故郷から離れたくない…
いろんな気持ちが複雑に絡まっていた。
祖父「まぁ…いきなりそんなこと言われても戸惑うのは分かる。」
祖父「聖輝くんにとって神戸が自分にとってどのくらい特別な場所なのか…顔を見ればよくわかる。」
聖輝「……。」
祖父「だったら帰って来ればいい。」
聖輝「えっ…?」
祖父「何の為に神戸に2人のお墓を建てたと思ってるんだ?」
祖父「命日には必ずこっちに戻って来て、一緒にお墓参りをしよう。」
聖輝「おじいちゃん……」
その言葉を聞いて、僕は二つ返事をした。