てのひらの福袋
第4章 【正気の沙汰】
「…っおい、お前!正気かよ?!」
「もちろん」
「うっ、うっ、嘘だっ!!だって、そんなの正気の沙汰じゃねぇよっ!!」
「……」
「……」
「………」
「……」
人気のない放課後の教室。
しばらく無言でみつめあっていたが、沈黙に耐えられなくなった俺は口を開いた。
「…なぁ、続きは?」
「まだ考えてない」
部長の沖田は事も無げに言う。俺と沖田は、二人しかいない演劇部の部員で、今、俺達は芝居の練習中だ。と言うか、さっきの部分のセリフがあるだけで、あとは何一つ出来ていない。
「…そもそもなんなんだよ、このセリフ?言いたいだけだろ“正気の沙汰”って」
「うん。ちょっと使ってみたかった」
「……お前なぁ……そんな思いつきで謎脚本ばっかり書くからみんな辞めてっちまったんだぞ?」
そう。我が演劇部だって、始めから部員二人きりだったわけではない。俺達が入部した頃は、それなりに部員数もいたし、ちゃんと部室もあった。こいつが部長に就任してからだ。
どんどん部員が辞めていき、俺と部長の二人きりになり、最後には部室まで閉鎖されたのだ。
だからこうして空き教室で練習しているわけだが、練習する題材すら無い。いや、無くはないか。沖田が書きたいシーンだけを書いた、思いつき脚本をやらされている。でもさっきみたいに数行で終わるものがほとんどだ。
「わりぃ、沖田…俺、もうお前についていけない。俺も、部活辞めるわ」
「そっ…そんなっ!演劇やりたくてこの高校に入ったんじゃなかったのかよ、辞めるなんて…お前、正気かよっ!」
「もちろん。至って正気だし、本気だよ。むしろ、正気じゃねぇのはお前のほうだろ。」
「もちろん」
「うっ、うっ、嘘だっ!!だって、そんなの正気の沙汰じゃねぇよっ!!」
「……」
「……」
「………」
「……」
人気のない放課後の教室。
しばらく無言でみつめあっていたが、沈黙に耐えられなくなった俺は口を開いた。
「…なぁ、続きは?」
「まだ考えてない」
部長の沖田は事も無げに言う。俺と沖田は、二人しかいない演劇部の部員で、今、俺達は芝居の練習中だ。と言うか、さっきの部分のセリフがあるだけで、あとは何一つ出来ていない。
「…そもそもなんなんだよ、このセリフ?言いたいだけだろ“正気の沙汰”って」
「うん。ちょっと使ってみたかった」
「……お前なぁ……そんな思いつきで謎脚本ばっかり書くからみんな辞めてっちまったんだぞ?」
そう。我が演劇部だって、始めから部員二人きりだったわけではない。俺達が入部した頃は、それなりに部員数もいたし、ちゃんと部室もあった。こいつが部長に就任してからだ。
どんどん部員が辞めていき、俺と部長の二人きりになり、最後には部室まで閉鎖されたのだ。
だからこうして空き教室で練習しているわけだが、練習する題材すら無い。いや、無くはないか。沖田が書きたいシーンだけを書いた、思いつき脚本をやらされている。でもさっきみたいに数行で終わるものがほとんどだ。
「わりぃ、沖田…俺、もうお前についていけない。俺も、部活辞めるわ」
「そっ…そんなっ!演劇やりたくてこの高校に入ったんじゃなかったのかよ、辞めるなんて…お前、正気かよっ!」
「もちろん。至って正気だし、本気だよ。むしろ、正気じゃねぇのはお前のほうだろ。」