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てのひらの福袋

第14章 両方の気持ち。

「ねぇねぇ、秋山君ってゲイなんでしょ?」

放課後、帰り支度をしていると突然話しかけられた。

「は?突然なに?」
「知らないの?けっこう噂になってるよ?」

話しかけてきたのは、同じクラスの島田さん。美人ではないけど派手で…たぶん…男遊びとかしてそうなタイプ。実際に現場を見たわけじゃないから外見だけで判断するのは良くないとは思うけど。

「ウソ。全然噂にはなってないから安心して」

……どっちだよ!

「ま、それはともかく、美紀子がさ、今、悩んでて。ちょっと意見聞かせてくれないかな」

 美紀子、というのはたぶん石川さん。島田さんとよく一緒にいる大人しそうな女の子。

「なんで僕に?」
「だってゲイなら女の気持ちも男の気持ちも両方わかるんでしょ?やっぱ恋愛の困りごとは、そういう人に相談するのが一番手っ取り早…」
「悪いけど、女の気持ちとか男の気持ちとか関係なく、他人の気持ちなんてわからないよ」

島田さんは、僕の言ってることが理解できないみたいな、ポカンとした顔をした。

「でも、ゲイなんでしょ?」

ゲイなら両方の気持ちがわかって当然、とでも言いたげな顔だ。

「ゲイってさ、エスパーでも神でも無いんだよ?ただの人間だよ?他人の気持ちなんて結局その人にしかわからないでしょ?」
「つまり、ゲイであることは認めるんだ」

え?

「いや、なんか、そういう感じがしたから鎌かけてみただけ。ゲイじゃなかったらそういう返事にはならないよね」
「…確かに僕はゲイだけど、それが何か?」
「バレたら、今度は開き直るんだ?」
「島田さんはっ、ゲイとかLGBTの苦労を知らないからっ」
「あたしはね、レズなの。で、美紀子のことが好きなの。でも、美紀子は秋山くんのことが好きなの」

僕は自分の耳を疑った。島田さんがレズで、石川さんが僕を好き??

「笑っちゃうよね。自分の好きな女の子の片想いの相手がゲイの男子だなんて。これがまだノンケの男子だったら諦めもつくのにさ~」

そう言うと島田さんはハハハと乾いた笑い方をした。

「美紀子にさ、秋山君はゲイだから見込み無いよって伝えてもいい?」
「伝えてどうするの?」
「傷心のところでワンチャン狙ってみる」
「それこそ見込み無いんじゃ…」
「やってみなくちゃわかんないじゃない。男子が好きだからって、ノンケじゃなくてバイかもしれないし」




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