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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

「結果、脳の萎縮が見られました」「…それは?」「チャンミンさんは、まだ30代後半ですね?」ちいさく、頷くユノ。
 「その年齢で、かなりの萎縮が見られる。過去に大きな事故に合われたり、頭痛などの持病もない」「チャンミンは、…子供の頃に家族でスキーに行って…、骨折して車椅子生活をしたぐらい…かな」「そのご家族にも脳疾患のかたは、おられない」「…ええ…」
 一瞬、二人は黙り込んだ。花やかにお茶の香りだけが、匂い立つ─
 「チャンミンさんの理解出来ない行動、奇行というようなもの…若い頃に、どうでした」大きな卓の縁の、白い麻のテーブルクロス刺繍に目をやって、ユノは口を閉ざす。
 「喜怒哀楽の…、感情の起伏が、─感受性の強いせいか─も…普段は冷静で…でも」「はい」
 「空港で」ユノは赤くなって云う。「ファンが見送ってくれるのを、掻き分けて舌打ちして」「─え?」「いきなり苛立って、走り出して」「はい…」「休憩所で煙草吸ってた」「…よく急にイライラがあるのですか」─考え込んだ。
 「そう云えば」思い出したように、顔を上げ、「ファンやスタッフの指摘…で」「話してください」お茶の硝子碗に触れた。

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