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狼からの招待状

第5章 化石の街

「ボリューム朝食ですね。パリは朝は簡単です」「食通の国なのに…」ヨーグルトを口に入れた。
 「友達の下宿に居候させてもらって、パリ暮らししたんです。素敵なアパルトマンでした」ウンギョンもスプーンを手にする。
 「ユノさん。今日はこの後、どうするんですか」



 バサリ…と、音を立てて、リノリウムの床に投げつけられる…大きめのグラフ雑誌。「何よ! 汚い─」手入れの行き届いた指先が、雑誌を拾い上げた。
 「お嬢さま。あちらに参りましょう、検温の時間でございますから…」
 特別病室の隅に控える看護師に、目をやり、隣の応接室にエミンを連れて入った。
 「お嬢さまが、お腹立ちになることでは、ございません」細長い濃い色合いのテーブルに置かれた雑誌。
 膨れっ面で、ページを繰る…「チャンミンさんを─まるで、この病院に閉じ込めて」見開きの誌面の片隅を、薄紅いマニキュアの爪先でつつく。 「見捨てたみたいな…何よ?」「そのようには、書かれてはおりません」睨みつけてくるエミンの視線を避けるように、キム侍従は特別病室に戻った。
 看護師は枕元のタブレットに、体温を入力して侍従に一礼すると、廊下に出ていった。

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