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狼からの招待状

第5章 化石の街

 「その後は公園デートですか」「彼女が、相談したいことがあると云うんだ。それで─」「ユノ兄さん。兄さんには、チャンミンさんより心配な人がいるんですね」
 カウンターに両手をついて、ユノを真正面から見詰めるジャスミン。赤いベストに明るい茶色の長めな髪。─カジノのディーラーのような洗練……
 「とにかく、彼女とは何でもないんだ。─心配ありがとう」不審そうなジャスミンの頬が、少し紅く染まった。
 扉の鈴音。「ユノ先輩」「ジャスミン。焼酎(ソジュ)一杯頼む」グレとフライが、肩を並べカウンターに近づいて来た。
 …オソオセョ、と呟くように云うと、〝眞露〟と黄色いラベルに赤文字のあるマスカットの色合いの瓶を、取り出した。 「細かく氷砕いて、入れてくれる?」「僕もね。ジャスミン」返事代わりのように俯いて、顔を赤らめる。
 アイスピックを彫刻刀の動きで操り、かき氷の小さな山が出来た。
 「器用だ」フライに云われ、伏し目がちになる。「ジャスミン」「はい。…」グレの呼び掛けに赤らめた顔を上げた。
 「バーテンダー・スクールに通ってるんだってね」「はい」「俺もよ…。こうみえて、首席で卒業したの」

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