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狼からの招待状

第5章 化石の街

 手をつなぐ仕草で公園を二人が歩く写真や、ベンチで肩を寄せ合うように座り、語らう様子の写真が掲載されている。
 …そのページの片隅に、キャルバリー病院の厳めしい正門の写真。“郊外の高台に聳えるチャンミンの入院する専門病院 訪問者を固く拒み、電話取材も拒否された”…と書かれてある。



 「ユノ兄さん。この写真の彼女と結婚するんですか」カウンターの端に広げられたグラフ雑誌。 「結婚…? 彼女でさえないんだ」ミントの葉を浮かべたグラスを脇にどけた。「チャンミンさんは、どうするんです」グラスの中身を見て、酒壜を傾け、注ぐ。
 「会いたい。でも婚約者が─」グラスをあおるユノを、見つめるジャスミン。生真面目な表情が、若い頃のチャンミンを彷彿とさせる。
 「何…わらうんですか」「あ。うん─ご免」ユノをひと睨みして、軽くため息をつく。
 「彼女じゃなくてアルバイトの記者なんだ」「学生でしょう、この…ケイとかいう人」雑誌の写真を顎でしゃくる。
 「違う。カフェの近くで、声を掛けられて─一緒に朝食を摂りながら、取材を受けたんだ」


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