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狼からの招待状

第5章 化石の街

向きなおったユノの顔に笑いかけながら、「エミン嬢は10日間くらいNYに行かれるそうです。久し振りにゆっくりお見舞い出来ますよ」



 「チャンミン」…思わず呼び掛けた。
 「ユノ先輩、ここでごゆっくり…僕、キム侍従に訊くことがあります」 微かな香りを長い黒髪から残し、グレは特別病室から出ていった。
 (チャンミン)部屋の片隅から、小さな白い椅子を運んで座る。
 久しぶりに見るチャンミンの顔は、青白く、やつれたようだった。
 「チャンミン」そっと小声で呼び掛ける。「会いにこれなくて…ごめん」シーツの下のチャンミンの指先に軽く触れた。もう片方の腕には、点滴の針が入れられていた。 「─ソウルに、帰ってたんだ」呟くように云う。「そうしたら、捜査に薬物」ため息をつく。
 「居場所がなくて、逃げてきた」チャンミンは小さな寝息を立て、眠っている。
 「お前…。チャンミンどうして」唇を噛んだ。「薬物に─そんなに染まってた─なんて」黙り込む。「俺が甘かった」項垂れた。
 「早く元気になれよ」白い壁を見つめた。「元気になってまた、二人…」ユノの指先に冷んやり、固い金属。指輪の感触──

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