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狼からの招待状

第5章 化石の街

エレベーターで地下へ降りる。足元が沈むような感覚─ドアが開くと、煌々とライトの灯る駐車場。
 ─壁の向こうから、眠らない街ソウルの喧騒─ 車の間をゆっくり歩く…自身の靴音だけが、甲高く響く。
 霊柩車のような黒い車体が目に入った。「ユノさま」助手席の黒光りするドアのまえ、眼鏡に黒い服のキム侍従が、佇んでいた。



 「婚約解消?」思ったより天井の低い車内だった。「さようでございます」「─」唇を引き結んで、前を見るユノ。運転席との間には、ガラスが嵌まっている。
 「ユノさま」「僕に何故…」──(女が、いるくせに! 気ちがい…ッ)エミンの捨て台詞。その後ろの車椅子の老人の眼。
 「率直に申し上げます。お嬢さまは、会長のご健康が思わしくなく、チャンミンさんのご回復もまだ先になる。悩まれた末の…」「チャンミンを捨てるんですか」「ユノさま」「チャンミンをどうするんですか」「ユノさま」(…ユノ─)「チャンミンの気持ちは、どうなんですか」「ユノさま。チャンミンさんにお会いください」「…」「チャンミンさんのお願いで、お迎えに参りました」運転席に帽子を被った男…微動だにせず、背中を向けている。

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