
狼からの招待状
第5章 化石の街
「ビィケアッフォ。こんな夜は─グレ」「たとえば?」「痴漢、露出狂。盗賊。特に…高名な変質者切り裂きジャック」「僕は医学生です。売春婦じゃありません」「俺も勤労青年だ。二人とも大丈夫だな」─霧がすべての物音を、吸い込むような夜──
「霧に濡れても二人だと楽しい…」「フライの作った唄。〝霧の中のジョセフィーヌ〟を僕─、思い出す」「良い奴だった。…ジョセフィーヌ」「想い出のマドンナですか」「うん。顔いつも赤くしてて可愛いかった、…金魚」「出目金ですか」「切れ長で一重瞼。マイ・マドンナ金ちゃん」 ようやく、アパート街の通りに着いたらしい。 霧はドライ・アイスの白い煙のように、冷たい。
アパートの入り口めざして、霧の冷気に濡れた自転車と、二人は歩む。 単調な電子音、グレの小ぶりな鞄のなかのスマホが鳴り出す。
アパートの角で、青い反射板が霞んでいる。
「霧に濡れても二人だと楽しい…」「フライの作った唄。〝霧の中のジョセフィーヌ〟を僕─、思い出す」「良い奴だった。…ジョセフィーヌ」「想い出のマドンナですか」「うん。顔いつも赤くしてて可愛いかった、…金魚」「出目金ですか」「切れ長で一重瞼。マイ・マドンナ金ちゃん」 ようやく、アパート街の通りに着いたらしい。 霧はドライ・アイスの白い煙のように、冷たい。
アパートの入り口めざして、霧の冷気に濡れた自転車と、二人は歩む。 単調な電子音、グレの小ぶりな鞄のなかのスマホが鳴り出す。
アパートの角で、青い反射板が霞んでいる。
