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狼からの招待状

第5章 化石の街

「明日、早く来られるか?」「夕方まえに来ます」「お前たちは?」「俺は夕方、7時まえです」「僕は深夜勤します」「そうしてくれるか。─フライ」「はい」「俺が明朝に準備しておく。後はお前に頼もう」ライトが瞬き、マスターのベストの白い光沢は滑らか…



 二人乗りの自転車は、電動アシスト。
 「─とにかく、今夜のマスターは妙だった」「僕、気がつかなかった」「今夜は棚卸しする。…そう云われて…」「気が変わったんだよ」辺りは濃霧。「早めに帰れて良かったね。フライ?」車輪の音が、乾いた響き。
 「それは云える。グレ…タンデムの気分はどうだ」「満喫したから、僕降りる。危ないから、歩いて帰りましょう」霧がますます濃くなり、深海にいるようだった。
 「髪が濡れてるな、グレ」「フライも…」自転車の燈光も煙って人魂に見える。
 「ここどこだ」「アパートまで辿り着けるかな」「カーナビを付けるべきだった」「街なかで遭難…レスキュー隊呼ぼう」行く手は白い悪魔の吐く息を思わす、霧。
 

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