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狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

 「グレさまがお見えで…ほっと致しました」首をちいさく振るキム侍従は白髪が増え、顔はいくぶん、縮こまったようにみえる。
 「昨夜は霧が深くて、気温も急に下がった。気候に過敏に反応したのでしょう」キム侍従は大きなため息…「─失礼を致しました」頭を下げる。 ……チャンミンが昨夜、突然暴れ出し、その直後に倒れ、昏睡状態にある…「昏睡から覚めたのは」「明け方でございます」徹夜で看病したらしい侍従は、赤い目をしょぼつかせた。
 「グレさま…今後もこういったことが続くのでしょうか」気弱な声が訊いてくる。「担当医の意見は?」「それが…昨夜の当直の方が、まだお若い先生で要領を得ず…検査のやり直しとだけで─」
 ドアを隔てただけの病室は、しんとしている。
 「どういうふうに暴れたのです」「錯乱状態と申しましょうか、泣き叫ばれたり…コップを投げられたり…」「それから、倒れた?」「顔は真っ青で、体は痙攣していました」「呼吸や嘔吐はどうでした」「暴れられて荒い息で─泡のようなものを吐かれました」「昨夜は食事は…」「薬を飲まれただけです。夕方から急にふさぎこまれて─気がかりだったのです」

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