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狼からの招待状

第6章 風のなかの二人

また、ため息をつき…「グレさま。お呼び立て致しました。どうぞお見舞いください─車を申しつけておきます」



 「そんなことがあったのか」「落ち着いた状態でいてくれれば…」「検査もやり直すんだろう?」  
 ─〈デミアン〉の入り口から折れたコーナーのソファに、グレとシォニはいた。
 「検査をやり直すよりも」「うん?」「僕はヒステリーだったと思う」クリームいろのジャケットのシォニが首を傾げる。 
 「ヒステリー…か、きっかけになる出来事は…」「独りになった。それがパニックを引き起こした」「侍従が付いているんだろう?」「婚約解消に、ユノ先輩も帰国。きっと淋しくなったんだ」
 艶やかな髪に囲まれたグレの顔を見ながら、「チョン・ユノ氏との再会が、特効薬か」「それはまだまだ、先になる…」 レディース・クラブの店内は、静かな昼まえ。 「ユノ先輩に」アイボリーの薔薇の意匠の螺旋階段のうえ、曇り硝子の窓から、午後の時間近い空が窺える。
 「週に1度、チャンミンさんの様子を、まとめてメールで知らせる約束したけど」「良好って、知らせたいよなぁ」かすかに頷くグレ…。

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