
狼からの招待状
第6章 風のなかの二人
「起きて」
黒い袖無しのワンピース・ドレスはタイトなスカート。濃色のロングコートを、羽織っている。
…呼びかけられても、捨てられたボロ雑巾のように地面にのびたまま……
「坊や?」薄目を開けた─。
「死んだふり?」冷たいわらいを、含んだ声…寝転がった体は痩せっぽっちのひ弱そうな…「眞~くん」ピクリと肩が痙攣する。
「眞~くん。マサキ…」慌てふためいた様子で、マサキ少年は体を起こした。身を切るような朔風に、マサキは小柄な体を震わせる。
「寒いの?」コートを取り、シャツ一枚の体に毛布のように掛けた。
マサキは、コートにくるまれ、蒼白な顔をそれに埋める。
「おくるみのなかの…新生児みたい」片方の頬の切り傷から、出血していた。「ここ怪我してる…大きな赤ん坊─ね」 ワンピース・ドレスだけの姿は、ハイヒールのせいか、高身長─180㎝近くありそうだった。
コートにくるまれた顔は、涙で汚れて赤みが差している。「やっぱり、赤ちゃん」ひとを嘲笑うような碧の瞳を、マサキの少年らしい華奢な腕に近づけた。
「あ…ら」腕に残る無数の─少年は慌てて、コートの下に手を引っ込める。
黒い袖無しのワンピース・ドレスはタイトなスカート。濃色のロングコートを、羽織っている。
…呼びかけられても、捨てられたボロ雑巾のように地面にのびたまま……
「坊や?」薄目を開けた─。
「死んだふり?」冷たいわらいを、含んだ声…寝転がった体は痩せっぽっちのひ弱そうな…「眞~くん」ピクリと肩が痙攣する。
「眞~くん。マサキ…」慌てふためいた様子で、マサキ少年は体を起こした。身を切るような朔風に、マサキは小柄な体を震わせる。
「寒いの?」コートを取り、シャツ一枚の体に毛布のように掛けた。
マサキは、コートにくるまれ、蒼白な顔をそれに埋める。
「おくるみのなかの…新生児みたい」片方の頬の切り傷から、出血していた。「ここ怪我してる…大きな赤ん坊─ね」 ワンピース・ドレスだけの姿は、ハイヒールのせいか、高身長─180㎝近くありそうだった。
コートにくるまれた顔は、涙で汚れて赤みが差している。「やっぱり、赤ちゃん」ひとを嘲笑うような碧の瞳を、マサキの少年らしい華奢な腕に近づけた。
「あ…ら」腕に残る無数の─少年は慌てて、コートの下に手を引っ込める。
