
狼からの招待状
第2章 霧魔
どんより曇った空から、時折、秋の陽が射す。貴重な宝物のように、教会の庭を輝かす陽光── 「彼氏、手術しないで済んで良かったわね」「まだ分からないよ」「それで神頼み? 相変わらずね」「俺はクリスチャンだからね」「週末はハロウィンよ」一歩まえにブーツを踏み出し、「1年で最高に魔力の強い日」 赤い唇を薄わらいの形にして、「生け贄は、ハロウィンの夜に相応しいもの」ユノの紺のブレザーに、触れるほどに近づくイボンヌ─。「ミイラも甦るわ!」「お喋りは教会のなかで聞こう」戸口に向かうユノの背に、「恋人を助けるのは、わたし」叫ぶような声が途切れた。
教会の樫材らしい扉の奥に銀の十字架。戸口の傍らの長窓に飾られた幽霊や魔女、小鬼のへらへら舌を出したわらい顔… ヘアバンドから白いレースのリボンが落ち、イボンヌの金髪が風もないのに、後ろに靡いた。誰かが、引っ張ったように髪が動いた。
「お姉さん、…イボンヌ」小公子を思わすブロンドの髪の少年が、後ろに佇んでいた。
「皆さん。それでは、ニュースでご存知の…聖テレジア教会での─非業の死を遂げられた、気の毒な方の為…祈りましょう」
教会の樫材らしい扉の奥に銀の十字架。戸口の傍らの長窓に飾られた幽霊や魔女、小鬼のへらへら舌を出したわらい顔… ヘアバンドから白いレースのリボンが落ち、イボンヌの金髪が風もないのに、後ろに靡いた。誰かが、引っ張ったように髪が動いた。
「お姉さん、…イボンヌ」小公子を思わすブロンドの髪の少年が、後ろに佇んでいた。
「皆さん。それでは、ニュースでご存知の…聖テレジア教会での─非業の死を遂げられた、気の毒な方の為…祈りましょう」
