テキストサイズ

狼からの招待状

第2章 霧魔

パイソン柄の黒い小さな鞄を手にしたマスターが、鍵を投げる。
 「スゴハセョ(お疲れ様です)。マスター,チョシミ タニョオセョ(お気をつけて)」グレとフライが揃ってお辞儀をして挨拶すると、「おやすみ…ユノさん、またおいで下さい」やわらかな笑顔を残し、朱扉を閉じた。
 「─俺の洗礼名は」「パウロ、そのダスター濯いで、下のスイッチ落として」グレの指示にシンクにお湯を溜めながら、「ま~最近、生活にバイトに追われて─俺の信仰も揺らいでるけどさ」スマホで教会の場所をユノに示すグレ。ダウンタウンの外れにある。
 「ミサは9時からです。僕、入り口にいます」「ユノ先輩。待ってます」気をつけの姿勢をして、上目遣いのフライが、しおらしい態度で云った。


 屋根の十字架は小じんまりとしているが、明るい茶で統一された教会は、周囲に芝生や小さい花壇があるせいか、広々した様子だった。
 花壇には、秋のデージーが咲いている。窓のブラインドの影に、かぼちゃ…「Trick or Treat?」「またきみか」 にやにや笑いのイボンヌが、水色のドレスに、白いヘアバンドで、芝生の上に立っていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ