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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第9章 先輩と傷跡

こうしている間もまだ効いている薬のせいで身体が疼いて、息が上がる。


「……ハァ、……んっ」


「苦しいの?」


「うん……、ハァ……」


「……触ったら、色葉傷つかない?」


表情を陰らす澄くん。


傷つくわけない。


あたしは、澄くんをセフレだなんて思ってないの。

澄くんは好きな人。だからお願い、


「触って……気持ち悪いの、ぜんぶ消して、澄く……ん」


涙をこぼしながら懇願するあたしに、澄くんは一瞬顔をゆがめた。


ズキンと胸が痛む。
どうしてそんな顔するの?



「……嫌なら、見捨てて。帰って……」



そう言って泣いてしまうあたしは
澄くんに選択肢を一つしか与えていないこと、なんとなくわかるのに。



「嫌じゃないよ。俺が消す。あんなのは消えるから、全部」




案の定、彼はあたしに手を差し伸べた。



もしも、こうするのはあたしと関係を持ってしまった義務だと彼が思っていたら。


したくもないのに、していたら。


そんな想像もできるのに、あたしは見ないふりをした。



恐る恐る近づく唇は、あたしの胸をズキズキと痛めるほど優しく触れる。



ーーちゅ、ちゅ。



ついては離れる温もりは、先輩のを帳消しにするにはなにもかも優しくて。


優しすぎて、涙が溢れる。


……好き、
好き、澄くん。


その気持ちが溢れかえるのに、澄くんの心とまじわれる気がしない。


苦しい。


心が離れていく気がしてたまらない。


だって、悲しそうな目があたしの視線を全然求めてくれないから。



さっきまで別の人に触られて弄られていた体に


触れたいわけがないって、

わかっていたのに。


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