テキストサイズ

放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第12章 夏祭りと毒林檎

「ていうか人混みやばくなぁい? 迷子になりそ~」


「だなぁ? おい澄ぃ、色葉ちゃんと手つないだげてー、迷子か誘拐かされたらたいへーん!」


「え!?」


ふたりの声にまず声を出したのはあたしだ。


澄くんはゆっくりと振り返った。


手をつなぐって言った?


……そんなのしたことない。



いや、いちど、指を絡めて手を引かれたことはあるけど。



そんな思い出を反芻するうちに、澄くんはあたしの前まできてくれていたらしい。


薄茶色の目があたしを見下ろしている。


「手、つないでいい?」


いつも澄くんはそう。
こっちに確認するんだ。


そういう優しい気配りが好き……。


「……う、うん」


こくこくと頷くと、すぐに手に温もりを感じた。


「……っ」



ふわりと繋がれた手から緊張が全身に走っていく。


「そんな緊張しないで。たかが俺じゃん」



ふっと、口元にすこしだけ浮かぶ微笑に、胸の奥がきゅっとした。


「……全然たかがじゃないよ」



そんな小さな声は雑踏に消されてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ