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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第12章 夏祭りと毒林檎

緊張して、何喋っていいのかわからなくなっていく。


でもあたし、そんな自分の性格なんてわかってたから、今日のために喋ることリストを作って丸暗記してきたの。


「あの……、」

「なに?」



伏目の瞳がちらりとあたしに寄る。


それだけで心臓が飛び出そうだったの。


だから「ど、どんな映画が好きですか」なんて、インタビューみたいなことを言ってしまった。


「ふ……っ。なにそれ?」



くすくすと肩を揺らす澄くんを見て、少し力が抜けていく。


「あの……前にね、今度もっと喋ろうっていってくれたでしょ?」


「うん。言ったね」


「だから……喋りたいなって思って……その」


「喋る内容考えてきてくれたんだ?」



どうして見透かすの。


それでそんなに優しい表情、向けないで……。どきどきするよ。


「……うん」


「……ありがと。俺は、邦画だったらミステリー系が好きかなぁ。洋画はアクション。この前やってたディップ主演のとかおもしろかった」


「あれおもしろいんだ。ちょっと気になってたから、今度見てみようかな」


「うん……姫路さんは? どんなのが好き?」



さりげなく呼ばれた“姫路さん”に、胸の奥がツキンと痛んだ。


こんなに喋れても”さよなら”の続きの今なんだと実感させられる。



「えっと……あたしは、ラブストーリーが好き……。『恋叶』って映画が一番すきで、セリフ覚えるくらい見てるかも」


「セリフ覚えるほどってすげーな。俺もあれ見たことある。姫路さん好きそうだよね。ロマンチックっていうかメルヘンっていうか……」


「あたし、そんなイメージ?」


「うん。そんでえろい」


「……っ、ばか」


「ふっ……はは。嘘だよ」



いたずらっぽく笑う澄くんを見たら、
やっぱり大好きって気持ちがどんどん溢れてしまう。


いっそ姫芽先輩の身代わりでもいいからって……そこまで思ってしまう。



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