キツネ様の日記帳~鬼畜変態野郎と〇〇プレイ~
第10章 鬼畜変態野郎と溢れる愛
「首輪、外さなかったのか?ここにいるのが俺だと知らずに、これ付けたまま、婚約者と会うつもりだったのか?」
こくんとうなずくと、力強く首輪を引っ張ってきた。突然のことに踏ん張りが効かず、前のめりになる体を、この人がぎゅっと受け止めた。
「ちゃんと言い付け守ったな、イイコだ」
「全然嬉しくない!もっとちゃんと説明してくれてたらこんな悲しい想いをしなくて済んだのに!」
「俺が嬉しいって言ってんだよ。いい加減、俺の言葉を理解しろよ、このアホキツネ」
「そんなにもひねくれた言葉なんて理解出来ないの!」
「ったく、次は言葉のしつけが必要みてーだな。トイレの前に教えるんだったぜ」
「もう!何なのよ!もっと他に言うことがあるんじゃないの!?」
「それは……まぁ、……そうだな。一度しか言わねーぜ」
この人が目の前で片膝をついた。私の目を真剣に見つめながら、アホのキツネでも分かる、分かりやすい言葉で想いを教えてくれた。
「おまえが好きだ。おれと一緒になってくれ」
多分もう聞けない、よくあるプロポーズの言葉。次に聞けるときは、この人と別れて誰かにプロポーズされたとき。一生涯に一度だけの、この人の愛の言葉だ。
よくあるプロポーズの言葉でも、この人なりの想いが込められていて、嬉しくて涙が出てきた。
私は何度も何度もうなずいた。言葉で返したくても、言葉が出てこなくって。「何だよせっかく言ってやったのに」と、やっぱりこの人らしいことを言いながら立ち上がって、また抱きしめてくれた。
私も好きだ。この温もりも何もかも。この人の【すべて】が好きで、愛しくて、この人を手放したくないって。そのためなら何でもしようって、そう思った。