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せいぎのみかた

第2章 ミツルの正義

ミツルはサラリーマンになっていた。
職場の同僚からも信頼される存在になっており、いろいろな悩みを相談されていて、何とか相談者の力になろうとしたのだが、その度に警察や行政に疑問や不満を抱くようになり、不信感を募らせていた。

例えば、架空請求の被害に遭った同僚がいた。
全く覚えのない未払料金を請求され、これは最終警告であり、期日までに振り込みが確認できない場合法的手段に訴えるとの文面である。

振込先の口座も記されていたため、その口座を調べれば犯人に辿り着けると思い警察に被害届を出そうとしたのだが、実際に振り込んだワケではないから実害のない被害届は受理できないし、捜査も何もできないと冷たく言い放たれた。

実際に多額のカネを振り込めとでも言うのか。口座を辿れば、受け子等の末端からになる可能性は高いが犯人に辿り着ける足掛かりにはなるのではないか。犯罪を未然に防ぎ被害者を出さないように市民の平和と安全を守ることが警察の本来の使命であるはずなのに、実害がないからと相手にもしないのはどういうことかと憤った。

また、夫のDVから子供を連れて逃げている同僚のOLが夫に住居を突き止められて再び子供も一緒に暴力を振るわれるという痛ましい事件も起こった。

行政が、反省しているし謝罪もしたいという小学生でもダマされないような夫の戯言を真に受けて易々と住居を教えてしまったことによる事件だった。

行政は何をやってるんだ、何のための行政だと憤りしかなかった。

ある日ミツルは通勤電車で女性が困った顔をしているのに気づき、よく観察すると男の手が女性のお尻を撫で回していた。

「何をやっている!」

ミツルは触っている手を握りしめて男を叱り飛ばした。男は何とか逃げようとしたが、ミツルのあまりの迫力と握力にがっくりとうなだれて観念した。

こうして男は取り押さえられ、痴漢の現行犯で逮捕された。

女性はミツルに何度もお礼を言った。
が、ミツルは全く安心できなかった。
この女性が前にも電車の中で困った顔をしているのをちょっと前にも見たことあるのを思い出した。

間違いなくあの時も痴漢に遭っていたのだ。
あの時は確証がなかったので助けてあげることができなかった。

その時に女性の回りにいた男たちを思い出してみると、今回捕まえた男はいなかった。

他にも彼女を標的に痴漢をしている卑劣な男がいる。

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