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せいぎのみかた

第2章 ミツルの正義

あの時にもっとちゃんと気づいていれば・・助けてあげられなかったのを申し訳なく思う。
もっとちゃんと気づかなかったために痴漢という卑劣な犯罪を見過ごしてしまった。

ミツルは自分を責め、そして彼女を痴漢から守る決意をした。

女性は最初はありがたいと思っていた。
ミツルが彼女の側に張りつくようになってから痴漢には遭わなくなった。
そうなってくると、いつも側に張りついているミツルが段々疎ましくなってきた。

彼女には恋人もいるので、ミツルがいつも側にいて変な誤解をされるのもイヤだった。

そのことをハッキリとミツルに伝えて、もう大丈夫だからと言ったのにミツルは卑劣な痴漢をまだ捕まえていないと納得しない。

もはや卑劣な被害に遭わないように彼女を守るよりも痴漢を捕まえることが大きな目的になってしまっているようである。

確かに度々痴漢に遭ったことはある。狙われやすいのかも知れない。
しかし、こうも執拗に彼女につきまとうのは、まるで彼女を痴漢を捕まえるための囮にしているようにも見える。

女性は電車の時間や乗る車両を度々変えたのだが、まるでどこかで見張ってでもいるようにミツルは同じ車両に乗ってきて女性の近くに張りつく。

まるでストーカーのようなミツルに女性は恐怖を覚えた。一体自分のことをどこまで見張っているのか、本当に痴漢を捕まえることだけが目的なのか、いつまでミツルはつきまとってくるのか・・

恐怖に震えて困り果てた彼女はついに警察に相談した。

ミツルがいつものように彼女を魔の手から守ろうと注意深く周囲を観察していると2人組の男に両腕を捕まれて次の駅で降りるように促された。
男たちは私服警官だった。

ストーカー規制法違反、迷惑防止条例違反、それがミツルの逮捕容疑だった。

彼女は痴漢の被害に遭っていた、彼女を痴漢から守りたかったとミツルは主張したが、猥褻目的、彼女への不埒な恋愛感情からのつきまといだと取り調べの度に呪文のように怒鳴られて、警察の都合がいいように調書が取られて実刑となった。

控訴しても無駄だ、男が女につきまとう理由なんて決まっている、客観的に見てお前の主張なんて誰が信用するかと散々に警察官になじられた。


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