
邪恋の爪痕と片恋の彼
第6章 戻らない日常
上司の電話があまりにも怖くて……身体に力が入っていた。
だから、血が出るほど手を強く握りしめていたのが分からなかった。
真壁に言われて床に血がポタポタと落ちていることに気がついた。
「開いて――――!境井さん!」
「あっ、あ――――…血…あれ?開けない…こ、怖くて――――開けない…」
俺は、手を開こうとするが…脳が拒否しているのか…なかなか開いてくれない!
しかも、血を見たことで恐怖が倍増したのか…震え始めた!
「…や…だ――――今…今……会社から…電話が…」
「電話?――――…会社から?先輩の件…で?」
俺は、頷き…頭をフル。
――――怖い…怖い…
言いたくない…野田が…野田が――――…。
そう思えば思うほど…手は開かず…更に力が入り…血が出る。
――――痛い…いや、手は痛くない…痛くない…
頭と心臓が――――痛い!
