
邪恋の爪痕と片恋の彼
第8章 知らない自分
「え――――っと、今は何時…?」
「19時を少し過ぎたころです…。今日はこのまま入院して、明日検査です…。後ろに豪快に倒れて頭打ってるんで…一応脳の検査して、異常がなかったら明日退院です」
テキパキと今後の説明をする真壁に俺は「え?あ…え?」と、ついていけない返事を繰り返す。
「――――わ…わかったが…ここの病院…は?…しかも個室って…俺はそんなに…重症だったのか?」
自分の置かれている状況判断に困るが、見渡すと立派な部屋に自分一人だけ寝ていると言う…違和感。
「あ――――…ここは、吉良病院です。祖父の経営する病院ですので救急で入れました。部屋も、俺の先輩特権ってことで……良い個室を選んでもらいもした」
――――は?
祖父…?誰の?
「――――母方の祖父の経営する…」
「え?真壁――――お前病院経営するお爺さんがいるのか?」
サラッとセレブ親戚がいることを告げられ俺は一瞬戸惑う…。
「なんで――――…不動産会社に…就職…?」
「言いましたよね?この仕事が好きだって……ま、途中嫌いになりかけましたけど」
――――あれ?そんな話をしたような…
