
邪恋の爪痕と片恋の彼
第9章 波
祖父は境井さんの事もちゃんと分かっていた。
俺が境井さんの着替えや下着を買いに出ている間に、話をしたと言う。
「彼は――――…真面目…なんだろうなぁ。“こうあるべき”と思い込んだら…そうしないといけない性分…“うつ病”になりやすいタイプだ……。
でも、そうなる手前で――――…1つの鍵が外れた…多分、千寿と出会ったから…選択肢が増えたんだろうな…」
「俺が――――?」
俺はただ…欲望に負けて…境井さんを抱いた…だけなのだが…
それが、良かったらしい――――…。
違う生き方がある…
違う見方が出来る…
こんな俺もいる…
と、思い始めた――――――――が、野田先輩の事故死でごちゃごちゃになり…
“断捨離”と言う奇行になった――――。
これが、俺と出会っていなかったら…“うつ病”まっしぐらだったそうだ…。
しかし、“断捨離”で食への意欲まで捨ててしまったのは…捨てるものがなくなってしまったから…らしい。
人の心は――――複雑である。
だからなのか、“断捨離”で踏みとどまれた要因の俺が側にいたら…食への欲求も高まる?のだろうか?
