
邪恋の爪痕と片恋の彼
第9章 波
「そうだ――――…退院して…あのアパートに帰るんですか?」
「そうだけど…?」
ふと、何もないアパートの事を思い出す――――…。
流石にあそこに帰ったら…再び“断捨離”地獄に舞い戻りだ!
「あの……担当してくれた先生も言ってたと思うけど――――…あの部屋には帰らない方がいいと思うんですよ…」
「あ――――…あぁ…言われた…」
境井さんはうつむき…落ち込む。
少したが、カウンセリングみたいな事もした境井さんは、担当した医師に――――…“断捨離”の限度を言われていた。
流石に、食事も“断捨離”していたことは…注意をされた。
しかし、無意識に行った“断捨離”行為が数日の入院で改善される訳もなく…、数ヵ月の続けた習慣は恐ろしいほど境井さんの身体に染み付いているに違いなかった。
「でも――――…そこしか帰る場所ないから…」
「なら――――…俺の所に…来ませんか?」
