
邪恋の爪痕と片恋の彼
第4章 日常訓練
「ちょっとは期待していたんですよ?朝――――貴方が俺を探してくれるのでは…と」
横にいる俺に向き――――…寂しそうに微笑んだ真壁に…俺は一瞬…ドキリと胸が傷んだ。
「――――癖だ……朝イチで野田のデスクを見るのは…。長年の習慣だ……意味はない」
“意味はない”と自分で言って――――…
傷ついた…
分かっていることなのに…無駄なことなのに…
長年の片想いは…俺に染み付き…
意味のない行動に移させる。
「習慣――――…ですか…」
「そのうち………増える現実に愕然とする」
そう言うと俺は「フッ」と笑った。
虚しい笑いが――――…沈黙の箱に消えた。
“増える現実”
――――結婚
――――新居
――――出産
――――夫婦喧嘩
俺はアイツから……
これらの現実を聞かされていく。
そのつど――――…嫌な思いをして………
俺の想いは…削られていく。
