
邪恋の爪痕と片恋の彼
第4章 日常訓練
「まぁ、現実は――――残酷ですから」
そう言うと真壁はエレベーターの階数表示に視線を向けた。
“残酷”
確かに――――…
俺は真壁の少ない言葉に納得した。
エレベーターが目的の階に到着すると、俺は気合いを入れ直した。
「よし――――…」
心の中で呟こうと思ったのに…それは声に出ていて、真壁もつられて「はい!」と、返事をしていた。
野田のことは忘れないと…
いま、隣にいるのは…俺を好きだと言う真壁だ…。
――――こいつの申し出に答えたら…俺は本当の俺になれるのだろうか?
つ~か、本当の…俺って…なんだよ。
野田に恋して――――失恋した俺?
いや。
違う――――…違う気がする。
