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死んでも愛して

第8章 ハチゾン

俺は足をひきずり、歩を進めた。

ずず、ずずず…

「いや…こないで…」

涙を浮かべて懇願する女の様は、演技だったなら
賞がもらえるだろう。

その様子は、ゾンビでなくてもそそるに違いない。

ーさて、この女、どうしてやろうか?
ーどうしてほしい?

こちらが生身の身体なら、あれやこれやと性的に虐めてみたいものだが、ゾンビの身体で腐敗がすすんでいるので、女の身体に触れるのも難しい。

ーいっそのこと、少し食べてみようか?
ーゾンビなんだもの
ー指の1本くらい…死にやしない…

さすがに俺も、これまで人肉に手をつけたことはなかった。

カニバリズムについては知識として理解はしている。
人肉を食べる…食料不足で必要に駆られて、またはそういう文化や宗教があって、更には、ゆがんだ性欲や欠けた愛情を満たすために、人は共食いをする。(厳密には人肉食の目的によって分類される)
俺はこれまでそれほどの探求心や必要性がなかったので、人肉を食べる機会がなかったのだ。

しかし、目の前にそのチャンスがきた。

ー生きた人間の身体をむしりとって、目の前で喰らう…か…

鬼畜の様だ。
およそ、人のなすことでない。
しかし、俺はゾンビ。
すでに人でなしなのだ。

ー喰ってみるか…?

俺は迷いながら、女に近づき、尿だまりに足を踏み入れた。

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